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【2024年7月最新】eVTOLの型式証明の認証プロセスや各社の開発状況を解説!

社会・経済

2024年7月現時点のeVTOL(electrical Vertical Take Off and Landing:電動垂直離着陸機)の各社の開発状況、および、型式証明の申請・取得状況、現時点での商業化目標年について勉強がてらまとめました。

各社の商業化の予定は、徐々に後ろ倒しとなっており、eVTOLの開発・社会実装のハードルの高さがわかります。現時点では、2025〜26年に商業化を目指している企業が多く、徐々に社会実装への期待が高まってきました。

各社の状況は、日々刻々と変わっている為、最新状況は各社のリリースやニュースをご覧ください。

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型式証明について

まずは型式証明について整理します。航空機は、サービスを開始/製品として販売するには、各国の航空局から型式証明を取得する必要があります。

各国の航空局

主な航空局としては、米連邦航空局(Federal Aviation Administration, 以下FAA)、欧州航空安全機関(European Aviation Safety Agency, EASA)、国土交通省航空局(Japan Civil Aviation Bureau, 以下JCAB)です。他にも、中国民用航空局やイギリス民間航空局(Civil Aviation Authority, 以下CAA)などもあります。

ちなみに、日本と米国は航空機に関する相互承認協定であるBASA(Bilateral Aviation Safety Agreement)を締結しており、各国で1から審査プロセスを踏むのではなく、証明内容を確認することで重複審査を減らす仕組みがあります。

サービス開始に必要な3つの証明

FAAを例に少し詳しく見ていきます。eVTOLのサービスを米国で開始するには、運航証明(Operation Certificate)、型式証明(Type Certificate, TC)、製造証明(Production Certificate, PC)の3つの証明が必要になります。

  • 運航証明 (Operating Certificate):航空会社が旅客運行を行うために必要な認証
  • 型式証明 (Type Certificate, TC):航空機の設計がFAAの安全基準に適合していることを証明する認証
  • 製造証明 (Production Certificate, PC):航空機が型式証明に基づいて適切に製造されていることを証明する認証

旅客運行サービスを実施するには、運航証明となる運航事業者免許(Part135)が必要になります。加えて、型式証明取得に当たっては、航空機の飛行試験を実施するための耐空証明(Airworthiness Certificate, AW)も必要です。

 

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型式証明の5段階の認証プロセス

また、FAAでの型式証明には5段階の認証プロセスがあります。

  1. 事前申請:申請者はFAAと初期の打ち合わせを行い、プロジェクトの概要、予定される認証の範囲、必要な資源などを議論します。
  2. 正式申請:申請者は正式な型式証明申請を提出し、必要な文書やデータ、計画をFAAに提供します。
  3. 設計評価:FAAは提出された設計データを評価し、適合性を確認します。これには、設計の詳細なレビューと、必要に応じて追加情報の要求が含まれます。
  4. 性能評価:実際の飛行試験やシミュレーションを通じて、eVTOLがFAAの安全基準を満たしていることを実証します。
  5. 最終認証:すべての評価と試験が完了し、FAAが設計と性能が規制基準に適合していると判断した場合、型式証明が発行されます。

 

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主なeVTOL開発企業

ではここからは、主なプレイヤーと、開発状況、航空局からの証明取得段階についてそれぞれ簡単にご紹介します。

Joby Aviation(米)

2009年設立のJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)は、米国カリフォルニア州に本社を置くeVTOLを開発する会社です。

トヨタ自動車やジェットブルー航空などからの資金調達に成功しており、2020年1月にはトヨタ自動車が主導する5億9000万ドルの資金調達ラウンドに成功しています。また、ANAホールディングスとのパートナーシップを通じて、日本における新たな運行事業の共同研究を進めています。

過去のトピックスとしては、2020年12月にウーバーがeVTOL事業から撤退する際には、ウーバーのeVTOL開発部門であるUver Elevateを買収しました。また、2022年2月には、カリフォルニア州で無人実験機の墜落事故を起こしています。性能限界を見極めるための飛行試験で定格最大速度を大幅に超えた速度で飛行していたとのことです。

プロダクト概要

Joby Aviationは、5人乗りのeVTOL「Joby S4」を開発しており、最大航行距離 約240km、最高速度 約320km/hで航行可能です。

項目詳細
機体名Joby S4
航続距離150マイル(240km)
定格最大速度200mph
(約320km/h)
乗員数5人乗り(乗客4人)

 

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証明取得状況

2022年5月26日にFAAから「Part 135 Air Carrier Certificate」を取得し、商業運行を行う許可を獲得しています。また、2023年6月には特別耐空証明を取得し、その後、量産試作機の飛行試験や量産プロトタイプ機での飛行試験を行なっています。こうした飛行試験を進め、2025年の商業飛行開始を目指しています。

型式証明の5段階の認証プロセスの内、3段階まで完了しており、現在は、第4段階作業に集中しています。Jobyは、FAAの「Part 23 Amendment 64」に基づいて型式証明を取得する見通しです。

また2022年10月には、JCABの型式証明を申請し受理されています。一方でEASAには、申請を行っていません。

参考:証明にかかる主な発表内容
2018年11月:FAAに対して型式証明申請(→Link
2022年5月:FAAから「Part 135 Air Carrier Certificate」を取得(→Link
2022年12月:FAAのシステムレビューの第二段階を完了(→Link
2023年6月:カリフォルニア州でパイロット生産された最初の航空機の特別耐空証明を取得(→Link
2024年2月: FAAの型式証明プロセスの第三段階を完了(→Link
(航空機の構造、機械、電気システム、サイバーセキュリティ、人間工学、騒音に関する認証計画を承認)
2024年5月:量産試作機の飛行試験を完了、量産プロトタイプ航空機を使用した飛行試験に移行(→Link

 

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SkyDrive(日本)

2018年に設立したSkyDrive(スカイドライブ)は、愛知県豊田市に本社を置く、eVTOLやドローンの開発・製造・販売を行う会社です。SkyDriveは、トヨタ自動車のエンジニアたちが中心となって設立されました。

SkyDriveは、事業展開に向けて丸紅とパートナーシップを結んでおり、スズキとは生産パートナーであり既に工場で製造も開始しています。また、JobyとANAと共同開発をして相互サポートを行なっています。そのほか、全日空(JAL)も運航サービス提供の支援を行っています。

プロダクト概要

SkyDriveは、1名のパイロットと2名の乗客を収容できる「SD-05」を開発しており、航続距離は約15〜40km、最高速度は約60km/hです​

項目詳細
機体名SD-05
航続距離15~40km
定格最大速度62mph(100km/h)
乗員数3人乗り(乗客2人)

証明取得状況

SkyDriveは、2021年10月に日本のJCABから型式証明の申請を受理されており、現在そのプロセスを進めています。SD-05は、型式証明の5段階の認証プロセスの内、2段階まで完了しており、現在は第3段階作業に集中しています。

また、2024年4月にはFAAからも型式証明の申請が受理されました。SkyDriveは、FAAの「Part 23 Amendment 64」に基づいて型式証明を取得する見通しで、商業飛行の開始は、2025年を目標としています。

日本では、当初、2025年の大阪関西万博でeVTOLを使った商業飛行を目指していましたが、必要な航空認証の取得が間に合わずに計画を変更しました。現在では、万博期間中には乗客を乗せた商業飛行ではなく、デモフライトのみを行う予定です。日本では、JCABの型式証明を2026年以降に取得する見込みです。

 

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Volocopter(独)

2009年に設立されたVolocopterは、ドイツに拠点を置く航空宇宙企業で、eVTOLの開発と製造を行なっています。

多くの企業と連携しており、Daimler AGやIntel Capitalからの出資を受け、Geely Holding Groupとも提携しています。Microsoftと技術協力も行っており、Azureというクライド技術を活用しています。また、全日空(JAL)と提携し、日本市場でのエアタクシーサービスの実現に向けた共同研究や試験運航を行っています。

Skyportsなどと連携し、都市型エアモビリティの発着場(VoloPorts)を設置するなど、インフラ整備にも積極的に取り組んでいます。

 

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プロダクト概要

Volocopterは、1名のパイロットと2名の乗客を収容できる「VoloCity」を開発しており、航続距離は約20〜30km、最高速度は約110km/hです。

項目詳細
機体名Volocity
航続距離約35km
定格最大速度110km/h
乗員数2人乗り(乗客1人)

 

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証明取得状況

欧州において、Volocopterは2021年12月にEASAから型式証明の申請を受理されました。Volocopterは、EASAの「特別条件 VTOL」の基準に基づいて型式証明を取得する見通しです。現在、型式証明の5段階の認証プロセスのうち、3段階目を完了しており、4段階目に進んでいます。商業飛行の開始は、2025年を目標としています。

米国では、2022年5月にFAAから型式証明の申請を受理されました。Volocopterは、FAAの「Part 21」と「Part 23」の基準に従って型式証明を取得する計画です。FAAのプロセスにおいては、現在、第2段階を完了し、3段階目の作業を進行中です。

日本では、2022年10月にJCABから型式証明の申請を受理されました。日本国内では、2025年の大阪・関西万博での商業飛行を目指していましたが、必要な航空認証の取得が間に合わず、デモフライトの実施に計画を変更しました。JCABの型式証明は、2026年以降に取得する見込みです。

Volocopterは、これらの認証を取得することで、各地域での商業飛行の開始を目指しています。今後も、国際的な認証取得に向けて継続的な努力を行っていく予定です。

 

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Vertical Aerospace(英)

Vertical Aerospace(バーティカル・エアロスペース)は、2016年にイギリスで設立されたeVTOLの開発企業です。創業者であるStephen Fitzpatrickは、エネルギー企業の創業者でもあり、航空業界に革新をもたらすことを目指しています。

Vertical Aerospaceは、2021年6月にSPACを通じてニューヨーク証券取引所に上場し、約2,000億円の資金調達に成功しました。同社はVirgin AtlanticやAmerican Airlines、さらにフランスのAirbus、日本の丸紅との提携を通じて、国際的な市場展開を加速しています。また、HoneywellやRolls-Royceと技術開発の分野で協力しており、これにより高度な航空機技術を採用した機体開発を進めています。

プロダクト概要

Vertical Aerospaceは、主要機種である「VX4」の開発を進めています。この機体は、航続距離は100マイル(約160km)、最高速度は200マイル(約320km/h)で、1名のパイロットと4名の乗客を収容できます。

項目詳細
機体名VX4
航続距離100マイル(約160km)
定格最大速度200マイル(約320km/h)
乗員数5人乗り(乗客4人)

 

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証明取得状況

Vertical Aerospaceは、2021年3月に英国のCAAから型式証明の申請を受理されており、現在そのプロセスを進めています。VX4は、型式証明の5段階の認証プロセスのうち、2段階まで完了しており、現在は第3段階作業に集中しています。

また、2023年9月にはEASAからも型式証明の申請が受理されました。Vertical Aerospaceは、EASAの「Special Condition for VTOL」に基づいて型式証明を取得する見通しで、商業飛行の開始は2025年を目標としています。

イギリスでは、当初、2024年のパリオリンピックでeVTOLを使った商業飛行を目指していましたが、必要な航空認証の取得が間に合わずに計画を変更しました。現在では、オリンピック期間中には乗客を乗せた商業飛行ではなく、デモフライトのみを行う予定です。イギリスでは、CAAの型式証明を2026年以降に取得する見込みです。

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以上、他にもeVTOLを開発している企業はありますが、一旦はここまでにします。これから商業化を実現した企業が出てくれば取り上げます!

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