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【超入門編】空飛ぶクルマ、eVTOLの概要まとめ

社会・経済

eVTOLに関する書籍を2冊読んだため、簡単に概要をまとめてみました。2024年にはサービス開始が予定されるなど、そう遠くない未来に上空で見かけるようになる新しい乗り物です。

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空飛ぶクルマ、eVTOLとは

”空飛ぶクルマ”と呼ばれるeVTOLは電動垂直離着陸機electrical Vertical Take Off and Landing)の英語の頭文字をとった呼び方です。

eVTOLは、飛行機やヘリコプター、ドローンなど既にある乗り物とは違う、全く新しいモビリティです。

出典:Joby Aviation

 

eVTOLはMaaSの一翼を担う

eVTOLは、個人所有ではなく「空のライドシェア」や「スカイタクシー」などのモビリティサービスでの利用を前提とされることが多いです。またeVTOLは、電動推進の小型航空機ですが、その多くはバッテリーのみを電源として用いるALL Electricタイプです。

さらに、電動化によって複数枚ローター(プロペラ)の構成を採用しやすくなり、飛行制御が容易になるため、AI技術による自律飛行が進むと考えられています。

垂直離着陸電動自律飛行、という3つを備えたeVTOLは、誰もが気軽に空を移動できるようにする新しいモビリティとして期待を集めています。

出典:SkyDrive

 

もちろんeVTOLの開発を進める企業が全て、サービスを前提とし、All Electric・自律飛行を目指しているわけではありません。都市間移動のために中長距離移動が可能なハイブリッドの機体を開発する企業もある他、所有向け・パイロット有など、各企業さまざまな形態でeVTOLの実用化を検討しています。

出典:AAM Reality Index

 

eVTOLの特徴(安全・静粛・クリーン)

エアラインと同程度の安全性

eVTOLは、ローターが多数に分散しており、それぞれ独立したモーターがバッテリーからの電気エネルギーで駆動されます。このように推進系を電動化分散させることで、どこか一カ所が故障しても他が補うことにより、安全性(冗長性)を高めることができます。

致命的故障の確率はヘリコプターに比べ約1/100であり、私たちが普段安心して乗るエアライン同程度と言えます。

ヘリコプター比 圧倒的な静粛性

またローターの直径が小さいためローター先端の速度が抑えられヘリコプターに比べて圧倒的な静粛性が得られます。

ただし、小型プロペラの場合は、揚力を確保するために回転数を上げることとなり、音質が高周波になります。高周波は、耳障りで一般的にはうるさいという特性がありますが、遠くまでは届きにくいという特性もあるため、離陸後に高いところまで一気に上がってしまえば気にならないとされています。

クリーンな次世代モビリティ

さらに電動化によりクリーンであることからも、次世代モビリティとして大きな期待がかけられ、今多くの企業やベンチャーが開発に参入しています。

その背景には、航空業界は、業界全体で2005年比で2050年のCO2排出量を半分にするという目標が設定されています。航空旅客需要が今後20年で約2倍になると見込まれる中、従来の燃費技術の改良だけでは不十分で、抜本策として電動化に期待が寄せられています。

 

eVTOLの機体タイプ

エンジンを電動モーターに、燃料をバッテリーに置換することで、駆動系と言われるギアやリンク類がなくなり、電気・電子制御に変わります。この簡素化により、設計自由度が向上し、様々なタイプの機体設計が可能になります。

eVTOLの機体には主に4つのタイプがあります。マルチローターリフト&クルーズベクタードスラスト(チルトローター)オーグメントリフト(チルトウィング)です。

出典:AAM Reality Index


マルチロータータイプは固定翼を持たず、複数の小型ローターにより浮力を得て、機体姿勢変化により推進力を得る構造。既存ヘリコプターに最も近い操縦となります。

リフト&クルーズタイプは、リフト(上昇)時に利用するローターと、クルーズ(巡航)時に利用するローターを別に備え、巡航時には固定翼によって浮力を確保します。

ベクタードスラストタイプは、装備するローターの角度を可変とし、上昇時と巡航時にその推力方向を変えるものです。巡航時には固定翼によって浮力を確保します。

オーグメンテッドリフトタイプは、翼そのものの向きを変え、上昇時は翼及びローターを上向きに、巡航時には翼とローターを前向きにするものです。

出典:Volocopter

 

それぞれの機体の形態には、利点と欠点があります。

例えばマルチコプターであれば、構造がシンプルで制御性が高いため型式認証は取りやすいとされる一方、複数のローターで空気抵抗は大きくなり、さらに固定翼もないため速度も遅いというデメリットがあります。

逆にチルトウィングは、空気抵抗は少なく巡航時の飛行効率が高い一方で、可変部が複雑な仕様になるため、信頼性に課題があり型式認証は難しいと考えられます。

 

eVTOLの課題

eVTOLは、航空機でもドローンでもヘリコプターでもない全く新しいモビリティのため、社会実装されるまでには多くの課題があります。バッテリー密度向上や安全性担保など技術的な課題に加え、法整備、運行管理システム、離着陸状の整備、社会受容性など課題は多岐にわたります。

課題は多いですが、空の移動革命に向けては、航空業界の他、自動車メーカーや大手ヘリメーカーも参入し、各社がしのぎを削っています。

ただ、2016年頃から空のライドシェアを牽引してきたUberが、2020年に研究開発部門をJoby Aviationに売却した他、そのJoby Aviationも2022年2月にカリフォルニア州で実験機の墜落事故を起こすなど、実現までの道のりは平坦ではないことがわかります。

2023年時点ではまだ空飛ぶクルマは実現しておらず、各社、当初のロードマップよりも遅れ気味です。現時点では、先行するJoby AviationやVolocopterなどは2024年の商業化を目指しており、日本ではSkyDriveは2025年の大阪・開催万博でのサービス開始を目指しています。

課題は多いですが、空飛ぶクルマを目にする日は、そう遠くない未来にやってきそうです。

 

eVTOLのおすすめ書籍

eVTOLに関する書籍は、2019年に日経BP社日刊工業新聞社から出版されています。

情報は少し古いですが、日刊工業新聞社の『空飛ぶクルマのしくみ-技術×サービスのシステムデザインが導く移動革命-』は、eVTOLの技術及びサービス実現に必要なことを網羅的に理解することができます。日経BPの『空飛ぶクルマ(電動航空機がもたらすMaaS革命)』は、各企業の戦略や過去の発表の様子、実証状況などがリアルに描かれており、各企業の違いをよく知ることができます。

 

 

日刊工業新聞者の『空飛ぶクルマのしくみ』の方が読みやすいので、初心者の方は先にこちら読むことをおすすめします。

 

以上です。では。

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